天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす
潤む視界の中で、それでもまだブログを読み続けていると、最後に一枚の写真が載せられていた。
このブログが本人のものでなく、昇さんが捏造したものだというわずかな期待も、その写真によって打ち砕かれた。
プロペラ付きの小型飛行機の前で、ノアさんと嵐さんを含む若い訓練生たちが五人で並んだ写真。とうてい偽物には見えない、嵐さんの自然な笑顔がそこにはあった。
震える唇の隙間から、涙交じりの熱い吐息が、はぁっと零れる。
このブログを読んだ後では、さっき車の中で嵐さんが呟いた言葉にも、ノアさんが関係しているんじゃないかと思えてならない。
本人に聞かなければ真相はわからないのに。夫婦は話し合いが大事だとあれほどみんなから言われているのに……次から次へと湧いてくる妄想が、私を不安にさせる。
「嵐さん……」
ここにいない彼の名を呼ぶ。口に出して呼ぶだけで、彼を愛おしく思う。
ノアさんにも退けない理由があるかもしれないが、私だって、嵐さんへの気持ちをなかったことにはできない
嵐さんがいくら『関わるべきじゃなかった』と言っても、私たちは関わってしまった。私はあなたを好きになってしまった。
本当の夫婦になることも、まだあきらめたくない。
昇さんと別れた時のようになんとなく彼とはもうダメだと決めつけて、その流れにただ身を任せるような終わり方にはしたくない。
「負けないん、だから……っ」
深呼吸をして、立ち上がる。なにか、お腹に入れよう。
腹が減っては戦はできない。