天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす
チャコールグレーのチェスターコートにシンプルな白の丸首セーター、細身の黒いテーパードパンツ。一見上品に纏めてるように見えるが、足元はごつめの編み上げショートブーツで崩しているのが、とてもお洒落だ。
正面にゆったりと歩み寄ってきた彼を見る。一八〇センチはゆうにあるだろうという長身で、ナチュラルだが清潔感のあるセンターパートの前髪から、凛々しい眉と力強い二重の目が覗いている。
尖った顎や鼻の形などしっかりとした骨格も男性らしく精悍で、思わずまじまじと見とれてしまう。そのうち、彼の引き締まった唇がふっと緩んで弧を描いた。
「お待たせしてすみません、露木です」
やわらかく目を細めた笑顔は、温かい印象だ。
なんとなく想像していた人物と違うので、調子が狂う。
「と、とんでもないです。私もつい先ほど到着したところで……あっ、香椎紗弓と申します。はじめまして」
「はじめまして……か」
露木さんが軽く私から視線を逸らし、呟く。
「えっ?」
「いや、なんでも。座ってください。料理は頼んでおきましたから」
「すみません、ありがとうございます」