天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす
真路さんは社交辞令で言っていたかもしれないが、他に相談できる適当な相手といったら広瀬くらいしかいない。
しかし、彼は今紗弓の友人である矢坂さんと付き合っているので、結婚生活のことは相談しづらかった。
真路さんにプライベートの相談を持ち掛けるのは初めてだが、きっと真面目に俺の悩みを受け止めてくれる。
そう思って、今の心境を打ち明けることにした。紗弓に仕事のことだと嘘をついたのは、申し訳ないと思っているが……。
「露木はさ、どうしてパイロットになったの?」
口をつけていたウィスキーグラスをカランと鳴らし、真路さんが俺に問いかける。
その優しげな眼差しには、俺がどんな答えを口にしても受け止めてくれるであろうという絶対的な安心感があった。
「それは……自分と両親の昔からの願いでしたし、両親が亡くなってからは、自分と同じ思いをする人をできるだけ減らしたかったからです」