天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす
「そういえば、露木は成沢さんと同じフライトスクール出身だっけ?」
自己嫌悪に陥る俺に、真路さんがふと問いかけてきた。
日本の航空会社全体で見ても、女性パイロットは稀有な存在。そんな中でブルーバードエアラインの女性パイロット第一号として入社したノアは、社内で注目の的だった。
「はい。留学先のバンクーバーで一緒でした。卒業後は別々の航空会社に勤務していましたが、まさか日本でまた一緒に仕事をすることになるとは」
「彼女には気をつけた方がいいかもしれない」
「えっ?」
思わず、眉根を寄せて真路さんを見る。グラスをコトンとカウンターに置いた彼は、周囲をぐるりと見まわして、俺に身を寄せた。
普段は穏やかな瞳が、鋭く細められる。
「彼女が青桐と会っているところを見た副操縦士がいるらしい」
青桐――。まさか、ここで名前が登場するとは思わなかった。
最近は紗弓にも連絡していないようだし、さすがに反省したものと思っていたが……。
「どうしてふたりが?」
「わからない。しかし、青桐はかなり露木に執着していただろ。だから、成沢さんからなにか過去の露木の情報を聞き出そうとしているとか」