天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす

「そんなに有益な情報はないと思いますが……」

 ふたりの目的はわからないが、嫌な予感がする。

 紗弓への未練を断ち切れずにいる青桐と、俺の結婚を知り腹を立てているノア。目指すものは別々でも、もし協力関係になったとしたら厄介だ。

「ノアにそれとなく聞いてみます。紗弓にも、青桐をまた警戒した方がいいと伝えないと」
「ああ、ストーカーの件か。香椎さんに聞いてる。青桐も堕ちたものだな」
「ええ……本当に」

 青桐が直接ラウンジに現れたあの日のことを思い出すと、今でも腹立たしい。

 仕事中にたまたま通りかかったターミナルで、ラウンジに迷惑客が来ているという話が、耳に入ってきた。レセプションの女性に絡んでいる男がいるのだと。

 まさかその被害者が紗弓だとは思いもしなかったが、非力な女性を狙う男というのは、体が大きかったり、権威のある男性の前では別人のように大人しくなる。

 幸い俺は上背があるし、パイロットの制服姿で出て行けば少しは効果があるだろうと思い、ラウンジに向かった。

< 145 / 229 >

この作品をシェア

pagetop