天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす
酒を飲んだせいか、翌日は昼近くまで惰眠を貪ってしまった。
スタンバイでもなんでもない休日なので問題はないが、紗弓は今日から遅番だったはず。
帰るのは夜遅く、俺は明日のフライトに供えて寝ているはずだからすれ違いだ。
寝ぼけた思考でそこまで考えて、ハッとする。朝のうちに話ができればと思っていたのになにをゆっくり寝ているんだ。
ガバッと身を起こすと、当然ながら隣で寝ていたはずの紗弓の姿がない。しかし玄関の方で物音がしたので、慌てて部屋を飛び出した。
「紗弓」
「あっ、おはようございます嵐さん」
すでに出勤準備を済ませた紗弓が、パンプスに片足を入れている。寝坊した自分を殴りつけたくなった。
「本当はもっと早くに起きて話がしたかったが、もう時間だよな」
「えっと……そうですね。三分くらいなら、大丈夫ですが……」
腕にはめた女性用の華奢な腕時計を見て、紗弓が言う。
三分。ゆうべ真路さんと話した内容を語るには、さすがに足りなすぎる。
しかし、なにも伝えないまますれ違いの生活に突入するのももどかしい。