天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす
安定した離陸で地上から離れ、ある程度の高度になったところで操縦をオートパイロットに切り替える。
両手が自由になったノアに機内アナウンスを頼み、俺は計器類のチェックを続ける。
引き続き異常はなくふっと息をついたところで、アナウンスを終えたノアが俺を見た。
「ねえ、嵐」
ブリーフィングから今まで、ずっと俺を名字で呼んでいたはずの彼女が、突然プライベートに戻ったかのように声をかけてきた。
フライトの状況は安定しており、こんな時、機長と副操縦士で雑談を交わすのも珍しくない。
しかし、タイミングを計ったかのように話し出したノアに思わず身構えてしまう。
「なんだ?」
「私たち、噂になってるみたいね。男女の仲なんじゃないかって」
クスッと笑うノア。俺にとっては煩わしい噂が、彼女にとっては愉快なものであるようだ。
やはり、彼女自身が流したのだろうか。
「その件だが――」
「嵐は、噂を本当にしちゃう気ない?」