天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす
俺の言葉を遮って、ノアが言う。冗談でも、友人に向けるセリフではない。
彼女の切実な眼差しにも、真剣な想いが込められているのを感じる。しかし、俺はその気持ちに応えられない。
どう断ればノアは納得してくれるだろう。
「私……本当にショックだったの。嵐は一生結婚しないものだと信じてたから」
窓の外に広がる暗い空を眺め、ノアがつぶやく。俺は計器から目を離さず淡々と答えた。
「ノアに話した時は、本当にそう思っていたよ。誰のことも悲しませたくないから、死ぬまでひとりでいようと決めてた」
「じゃあ、どうして……!」
「きっかけはわからない。だけど今は、紗弓のためになにをしてあげられるか、紗弓がどうしたら笑顔になるか、毎日そればかり考えて生きてるんだ。……俺は、彼女に恋をした。もう、ひとりには戻れない」
ノアには悪いと思う。だけど、自分の気持ちに嘘はつけない。
せめてもの誠意を表したくて、正直な気持ちを伝える。
ノアの大きな瞳が潤んで、彼女はそれを隠すように顔を逸らした。