天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす
「ひどい……。嵐と一緒に仕事がしたくて日本に来たのに」
ノアの瞳に溜まった涙が、ぽろっと頬にこぼれる。愛情表現のつもりで放ったセリフかもしれないが、俺には自分本位な理屈にしか聞こえない。
そんな不純な動機で、パイロットの仕事が務まると思っているのだろうか。友人だからこそ、もう一度冷静に自分を振り返ってみてほしい。
「最近のきみは少しおかしい。俺との妙な噂を流すのも、青桐のようなやつと付き合うのも、結局きみの価値を下げてしまうだけだと思わないか?」
噂の出どころも、青桐と会っていたという話も確実なものではない。
しかし、俺の問いかけにパッと目を逸らしたノアを見て、図星なのだろうと察する。
「悪いけど、ノアのしていることは全部無駄だ。とくに、紗弓を傷つけるような真似をするのはもうやめろ。これ以上なにかするようなら、たとえきみでも許さない」
「待って……ごめんなさい、私、そんなつもり……」
「トラブルの報告があるから、先に行く。いい加減、頭を冷やしてくれ」
追いすがるように手を伸ばしてきたノアを振り切り、コックピットを出て行く。