天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす
「そうなんです。まったく、自分の相手くらい自分で選ぶって言ってるのに。……なんて、せっかく会ってくださっている露木さんの前ですみません」
「どうぞお気になさらず。というか、おあいこです」
「おあいこ……?」
「ええ。僕も、結婚するつもりはないのに、香椎さんの頼みを断れずにここへ来てしまった身なんです。紗弓さんに失礼だとわかっていながら、すみません」
深々と頭を下げる露木さん。
そんなこと、たとえ真実でも最後まで隠し通せばいいのに……正直な人、なのだろうか。
意外すぎる展開に目をぱちくりさせる。
「頭を上げてください。失礼だなんて思っていませんし、むしろホッとしました」
「ホッとした?」
「ええ。私こそ失礼なのですが、もしかしたら出世のために利用されるのかも、なんて……父が特殊な立場なので、そんな風にも勘ぐってしまって」
査察操縦士の娘である私を娶れば、自分の評価につながる。短絡的な考えだけれど、そう考えるパイロットがいてもおかしくないと思ったのだ。
昇さんから聞いていたように、露木さんが父にゴマをするタイプならなおさら。