天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす

 パイロットの仕事に危険が伴う事実は変わらないが、その先に描くビジョンはもう、家族を作らないなんて消極的なものではない。

 紗弓と共に生きる未来のために、最上級の安全運航を実現するパイロットであり続ける。

 ――それが、彼女を愛することで見つけた俺の信念だ。


 指定された場所に着き、ベンチにいるはずの彼女の姿を探す。紗弓が言っていた通り人の数はまばらだが、なかなか見つからない。

 タイミング悪くトイレにでも行ったのだろうか。

 辺りをキョロキョロしながら、他の階も探してみようかと思っていたその時。革靴の先に、コツッと固いものが当たった。

 小さなキーホルダーのようなそれを拾い上げた瞬間、心がざわめく。

「防犯ブザー……紗弓の?」

 よく見ると、金具のバッグに取り付ける部分がついておらず、まるでその先だけ引きちぎられたかのよう。

 誰が、なんのために?

 嫌な予感が全身を駆け巡ったその時、ポケットの中でスマホが震えた。

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