天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす
トラブルのち、トラブル

 嵐さんとお墓参りに出かけた日の夜。

 彼は真路さんに会いに出かけてしまったので、夕食はひとりだった。

 ノアさんのブログを見て沈んだ心を励ますように、家にある食材を集めて鍋を作ることにした。

 鶏がらスープをベースに、冷蔵庫で見つけたキムチと豚バラ肉、ネギやきのこ類を具材にしてしばらく煮込む。

 キムチのパンチのある香りが部屋中に立ちこめ、それを嗅ぐだけでもなんとなくエネルギーが湧いてきた。

 冷凍のご飯を温めて鍋と一緒にダイニングテーブルに並べ、ささやかな夕食にする。器に移した鍋のスープを啜ると、ぽかぽかと体が温まった。

 お腹が満たされてくると、気持ちも前向きに変わってくる。ノアさんに対抗するにはどうしたらいいか、黙々と食事をしながら考えた。

 今の彼女なら、どんな手を使ってでも嵐さんの心を手に入れようとするだろう。ステイ先で嵐さんとふたりきりにさせるのは危険……。

 だけど、東京にいる私にノアさんの接近を阻止することはできない。

< 173 / 229 >

この作品をシェア

pagetop