天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす
迎えた二月十四日の夕方。嵐さんには大阪に向かうことを内緒にしたまま、ひとり空港へ向かった。
職場である第三ターミナル国際線しか扱っていないので、今日は慣れない第一ターミナルだ。
少し迷いそうになりつつも、問題なくチェックインを済ませる。予定通りの時間に搭乗案内が始まる。
緊張はしているが、チケットを取ったあの夜よりも少し不安は薄れていた。
というのも、真路さんと会った翌朝の彼は、なにかが吹っ切れたような顔をしていたのだ。
その上、『世界で一番愛してる。俺のかわいい奥さん』――なんて、極上の愛の言葉までもらってしまった。
出勤前だったために彼の真意は聞けなかったけれど、あれは心からの言葉だと感じた。彼を信じて大阪行きはやめ、大人しく東京で待っていようかとも思った。
しかし、ノアさんが一緒のフライトであることは変わらない。
ステイ先で彼女がなにをするかわからないので、やっぱり嵐さんのそばにいたい気持ちが強く、チケットはキャンセルしなかった。