天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす

『それでは、到着まで今しばらくお待ちください。本日はブルーバードエアライン209便のご利用、まことにありがとうございます』

 アナウンスが切れると、ようやく深く息を吸えるようになる。気分を変えたくてトイレに立つと、通路から杏里さんが歩み寄ってきた。

「紗弓ちゃん大丈夫? 顔色が悪いようだけど……」
「すみません、ご心配おかけして。なんともないので気にしないでください」
「本当に? つらかったら私でも他のスタッフでも、すぐに申し出てね」
「わかりました。ありがとうございます」

 私ばかり見ているわけじゃないのに、杏里さんの気遣いはさすがだ。

 私に声をかけた後すぐにまた別のお客様のもとへ行ってしまったが、ひとり味方がいてくれると思うだけで、心強かった。

 トイレを済ませて席に戻ると、シートベルトを締め直す。その直後だった。

 耳に少し痛みを感じると同時に機内に聞いたことのない警告音が鳴り響き、天井から酸素マスクが下りてきた。客室内がいっせいにどよめく。

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