天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす

 羽田への緊急着陸はとてもスムーズだった。

 飛行機を降りると地上職員から振替便への案内があり、準備ができ次第すぐの出発になると告げられる。

 元々大阪に用があるわけではなかった私は、振替便には乗らないと伝えて預けていた荷物だけ受け取った。

 嵐さんもさすがに今日の乗務はもうないはず。とはいえトラブルの報告があるだろうし、いつ帰れるのかはわからない。

 先に帰ってもいいんだろうけど……会いたいな。会って、お礼を言いたい。

 私たち乗客の安全を守ってくれてありがとうって。嵐さんのお陰で、全然怖くなかったって。

 このまま空港で待つと決め、とりあえずカフェに入った。コーヒーを飲みながら、嵐さんにメッセージを打つ。

【トラブルの対処、お疲れ様でした。私、あの便に乗っていました】

 驚く彼の顔を想像し、小さく笑みがこぼれる。

 しかし返事も既読の通知もなかなかつかないので、私はしばらくカフェの窓からターミナルの景色をぼんやり見ていた。

「お客様すみません、間もなく閉店時刻で……」

 店員に声をかけられハッとする。気が付けば、店内にいるのは私だけだった。

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