天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす
偶然ではなく、明らかに私を見つめている。まるで睨みつけるような視線の強さで〝彼女〟だとすぐにわかった。
振り向いた先にいたのは、細身のコートにパンツを合わせ、抜群のスタイルを際立たせているノアさんだった。
嵐さん同様、彼女も仕事が終わったところだろうか。
こんばんはと言おうか悩んでいるうちに、彼女が歩み寄ってくる。
「紗弓さん、こんなところで偶然ね。暇ならちょっと話できる?」
「え、ええ……」
暇ではないけれど、話くらいなら。そう思って頷くと、彼女は周囲を見回す。
「ここじゃちょっと都合が悪いんだけど、展望デッキへ行かない?」
どうしてここでは話せないのだろう。最終便はほとんど出払って人の姿はぽつぽつとしかなく、誰かに盗み聞きされるような心配もない。
違和感を覚えながら、彼女を見つめる。
「展望デッキは冷えませんか? 今ならここも十分静かですし……」
「いちいち口答えしないでくれる? デッキで話したいって言ってるでしょ?」
あからさまにイラついている。やはり、ノアさんにはなにか思惑があるのだろう。
嵐さんにメッセージを打ってデッキにいることを伝えたいが、もし彼女に気づかれたらますます逆鱗に触れそうだ。