天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす

　デッキの控えめな照明に男性の顔が照らされた瞬間、瞬間、私の体は凍り付いたように動かなくなった。

　以前ラウンジにやってきたときと同じ黒のモッズコートに身を包むその人は、元恋人の昇さんだった。

　どうして、彼らが親しげにしているの？

「お待たせ。寒いんだからさっさと済ませてよね」
「そう焦らせるなよ。感動の再会なんだから」

　感動の再会……？　誰と誰が？

　反論したいのを堪え、怪訝な目で彼を見つめる。

　ノアさんはつまらなそうな顔をして私たちから離れ、駐機場の様子がよく見えるフェンスの方へ歩いて行ってしまった。

「やっと会えたな、紗弓」

　心から嬉しそうな笑みで、昇さんが一歩近づく。

　悪気なんてまるでなさそうなその笑顔が、不気味で怖い。

　だって彼は、警察から一度警告を受けているはずなのだ。私に接近してはならないと。

「どうして昇さんがここに？」
「元々ノアちゃんと約束していたんだ。彼女、仕事で失敗したから話を聞いてほしいって。だからデッキで待っていたら、紗弓がいるって聞いて連れてきてもらった」
「……なんのお話でしょう？」