天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす
「堅苦しい話ばかりになってしまいましたね。せっかく美味しい料理が並んでいますから食べましょう」
少し暗い気持ちになっていたところで、露木さんが優しく促してくれる。
テーブルに並んだ料理を眺め、私は笑顔で頷いた。
「そうですね。父には私から『露木さんとうまくいかなかった』と報告しておきます。もちろん、露木さんのこと悪くは言いませんので」
話しながら、料理を取り皿に移す。
からっと揚がった春巻きや、中身が透けて見えるほど薄皮の蒸し餃子、れんげにちょこんと盛られたエビのチリソース。どれも色とりどりで、目移りしてしまう。
「すみませんが、お願いします。でも、決して紗弓さんのことが気に入らなかったとか、そういうわけではないんです」
「今さらお世辞を言わなくても大丈夫ですよ」
「いえ、お世辞ではなく本当に。家族を作ることに積極的になれないのは、僕自身の問題なので……紗弓さんのことは、心から魅力的な女性だと思います」
仕事について語った時と同じ、真摯な眼差しに射貫かれる。彼とは今日を境にもう会わないはずなのに、胸が高鳴る。
女たらしという部分だけは、紛れもない事実なのかもしれない。
家族を作る気がないというのも、ずっと複数の女性と遊んでいたいからとか……。
とにかく、甘い言葉を真に受けてはダメだ。