天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす
彼らがつながっているとわかった今、そんな話を鵜呑みにしてショックを受けるほど私もバカじゃない。
昇さんは少し妄想が過ぎるし、ノアさんは私を傷つけるためなら平気でひどいことを言う人。
あのブログの内容もおそらく真実ではないのだ。
「そんな……じゃあ、私も?」
思考は冷静だが、昇さんの話にショックを受けたふりをする。彼に気持ちが傾いているように見せた方が、油断を誘える。
「ああ。だから、俺のところへ戻ってこい。紗弓がそばにいれば、俺、パイロットとしても復帰できるような気がするんだ」
そんな他人任せの考えで、復帰なんかできるはずがない。
たったひとりでなにもかも乗り越えてきた嵐さんの強い生き様を知った今、昇さんの考えがいかに甘いかを改めて感じ、ため息をつきたくなる。
「だったら昇さんの口から彼に伝えてくれませんか? 私たちの結婚生活は終わりだと。……今、ここで」
「なるほど。いいなそれ。露木が慌てるさまをふたりで楽しめるわけか」
「はい。女性を弄ぶような人には、それくらいの罰があってもいいと思うんです」
「やっぱり紗弓は綺麗で賢くて最高だ。待ってろ、今電話してやる」
勝ち誇ったような顔でスマホを操作する昇さん。
私にも聞こえるようにスピーカーにした状態で、嵐さんの応答を待った。