天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす
『はい』
コール音は三回で途切れ、嵐さんの声がした。
今すぐ助けを乞いたいが、そんなことをしたら昇さんになにをされるかわからない。
ギュッと両手を握りしめ、なにかサインが出せないか必死で考える。
「よう露木。今日もご活躍だったみたいだな。ノアちゃんに聞いた」
『……青桐』
静かな声にも、怒りがこもっているのを感じる。
防犯ブザーには気づいてくれただろうか。そうでなくても、私があの場所にいないことを心配しているはず。
「トラブルついでに、飛行機落としちゃえばよかったのにな。そしたら、紗弓もノアちゃんもお前と一緒に死ねて、ハッピーエンド。俺だって、お前が消えてせいせいするのに」
嵐さんへの勝利を確信して有頂天になっているらしい昇さんは、私が隣にいるにもかかわらずそんなことを言う。
けれど、きっとこれが彼の本音なのだろう。私のことなんて本当はどうでもよくて、ただただ嵐さんへの嫉妬のエネルギーで動いているのだ。
『まともに言い返すのも馬鹿馬鹿しい。紗弓はどこだ』
「心配しなくても一緒にいるよ。だが、お前の女癖の悪さにうんざりして俺に乗り換えるそうだ。残念だったな」