天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす

『その程度でブラックだと言い張るなら、航空会社だけでなく他のどんな企業にもまともに勤められないぞ。そもそも、きみには認めてやるほどの実力なんてない』
「うるさい、うるさい……っ!」

 昇さんが、神経質な様子で声を張り上げる。

 あまり怒らせて突発的な行動に出られても困るので、じりじりと昇さんから距離を取っていたその時だ。

 近い方の出入り口に、うっすらと人影が見えた。近づいてくるにつれ、嵐さんに似た背格好の男性だとわかり、胸が高鳴る。

 彼がデッキに出てきた瞬間、パイロットの制服が微かな照明の下で浮かび上がる。

 私は昇さんの目を盗み、一目散に駆け出した。

「嵐さん……!」 

 彼の名を呼ぶと、嵐さんもすぐ私に気づいてくれる。手が届きそうな距離まで近づくと、嵐さんに腕を引かれて彼の胸に飛び込んだ。

 背中に回った腕が、ギュッと私を抱きしめる。

 あたたかくて絶対的な安心感が、私の全身を包み込んだ。

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