天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす
「紗弓、遅くなって悪かった。けがはないか?」
「大丈夫です。絶対に来てくれるって思いました。防犯ブザーには気づきましたか?」
「ああ。もしかして、あれはきみがわざと?」
「はい。ばれないように外すのが大変でしたけどなんとか。それから、嵐さんに電話するよう昇さんをけしかけて」
「紗弓が聡明なのはわかっていたが、ここまで度胸のある女性だとは知らなかった。電話で『寒い』と伝えてくれたのも助かったよ。……でも、あまり無理をしないでくれ」
私の髪を優しく撫でながら、嵐さんが安堵の息をついた。本気で私の身を案じてくれていたのが伝わってくる。
「心配かけてごめんなさい」
「きみが謝ることじゃない。……悪いのは、あのふたりだ」
そっと体を離した彼が、少し離れた場所にいる昇さんとノアさんに鋭い視線を向ける。
しかし、彼らはその視線に気づかず、激しい言い合いをしていた。
「せっかく私が紗弓さんをここまで連れてきてあげたって言うのに、なんでうまくやらないわけ? 思い出の場所とか言ってないで、さっさとホテルにでも連れ込めばよかったじゃない」
「うるさいな、俺はムードを大事にするタイプなんだよ!」