天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす
ふたりの協力関係はすっかり崩れたようだ。怒鳴り声を上げる昇さんを、ノアさんはうんざりしたように見つめる。
「あ~気持ち悪い。あのブログの文章もなに? 得意だって言うから頼んだけど、ナルシストかつポエムちっくな文章に鳥肌立ったんですけど」
「それはノアちゃんに読解力がないだけだろ?」
「その呼び方もやめてくれる? 寒気するから」
やっぱり、あのブログはノアさんが書いたものではなかったらしい。
写真は本物のようだったけれど、文章は昇さんが担当していたのだ。そういえば、彼はもともとロマンチスト。
告白もラブレターだったし、送られてくるメールの文章もやけに詩的だった。ブログの文章も得意げに作成したのかもしれない。
簡単に騙された自分が情けない。
「……話をしてくる」
ふたりの言い争いが一旦落ち着いたタイミングで、嵐さんが静かにそう言った。
「私も行きます」
「それなら俺の後ろにいてくれ。青桐が手を出さないとも限らない」
「わかりました」
嵐さんの後について、ふたりのもとへ近づいていく。
私たちに気づいたノアさんはぷいと顔を背け、昇さんはチッと舌打ちをした。