天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす
「青桐」
そう呼ぶ嵐さんの声はぞくりとするほど冷たかった。
「警察から、一度警告は受けているはずだな?」
「わかってる。俺はもう紗弓から手を引くつもりだったんだ。なのに彼女が……」
昇さんが、責めるような目でノアさんを見つめる。ノアさん本人は目を逸らしたまま、不機嫌そうに腕組みをしている。
「人のせいにするな。どんな形であれ、紗弓に近づいたことは事実。このことは、もちろん警察に報告する」
「……好きにしろ」
首をうなだれる昇さんに、もう反論する気力はなさそうだった。
反省しているかどうかは不明だが、ストーカー行為をやめてくれるならなんでもよかった。
「それと」
話は終わったかと思ったものの、嵐さんがなにか言いかける。
昇さんが目線を上げると同時に、嵐さんはつかつかと彼の目の前まで歩み寄り鋭い瞳で彼を見下ろした。
「自分本位な考えでこの先も人に迷惑をかけ続けることしかできないのなら、きみは一生俺に敵わない。よく覚えておくんだな」
ここまで強い物言いをする嵐さんは初めて見た。それほど本気で怒っているのだ。
私へのストーカーの件だけでなく、嵐さんが誇りに思っているパイロットという職業を侮辱し続ける彼に、我慢の限界だったのだろう。