天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす
「しかも、さっきの言い分から察するに、きみは紗弓が青桐に乱暴されてもいいと思っていた。むしろ、その方が望ましいくらいに。……俺にはそれが許せない。失望したよ」
嵐さんが〝失望〟と口にした瞬間、ノアさんの瞳が切なげに揺れる。
好きな相手から言われたら、かなりつらい言葉だ。もちろん同情なんてしないけれど……。
「……紗弓さん」
どうしても彼女を許せない気持ちと戦っていると、不意に彼女の方から声をかけられる。
またひどいことを言われるのではないかと身構えるものの、私を見つめる彼女の眼差しはひどく弱々しい。
「嵐と友達でい続けることは、どうかは許してくれる? あなたにしたことは謝るから」
「えっ……?」
この期に及んでなにを言うのだろう。謝罪の言葉も、まるでついでのように軽い。
「家族を失ったうえ、嵐まで失ったら生きていけないわ。だからつい、あなたに意地悪してしまったのよ。だけど、もうしないから……お願いだから、友達でいることだけ……」
切実に訴えるノアさんを見つめながら、私の心は〝嫌だ〟と言っていた。
自分に彼の友人関係を制限できる権利があるとは思っていないけれど、彼女だけは、受け入れられない。