天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす
真っすぐに俺を見つめ、そう言った彼女。
お世辞ではなく心からの言葉であろうことがとなんとなく伝わってきて、心が温かくなった。
俺は毎日のように眺めているのですっかり暗記しているが、彼女に感化されて自然とメモに視線を落とした。
【嵐へ】
一番上には、そう書いてある。その下に、筆跡の違うふたつのメッセージが並んでいた。
【Be strong.(強くなりなさい)】
【Look abroad.(世界に目を向けて)】
今は亡き、両親からのメッセージ。今回バンクーバーから日本へ帰国したのも、両親の七回忌を行うためだった。
向こうへ戻ったらまた、広い空を飛び回る日々が始まる。
両親に誇れる自分であるために、パイロットとしての技量を磨かなくては。
「ありがとう。おっしゃる通り、とても大切なものなので助かりました」
ラウンジスタッフに笑顔を向けると、彼女もまた微笑んでくれる。
その笑顔にもやはり嘘はなくて、彼女は心から人と接することが好きなのだろうと想像する。