天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす

「今ので伝わらなかったか?」
「えっ? なにがですか?」

 キョトンとして目を瞬かせると、身を屈めた嵐さんが私の耳元に唇を近づける。

「今夜、きみを愛したいと言ったんだ」

 ふたりきりのエレベーターで誰にも聞かれる心配はないのに、わざと内緒話のように囁いた嵐さん。ドキッと鼓動が跳ねて、顔に熱が集まる。

 夜更かしって、そういう言う意味だったのね……!

「どうする? 紗弓がまだ待ってほしいというなら、もちろん待つけど――」
「だ、大丈夫……です。私も、今夜がいい」

 緊張して上擦った声になってしまったが、きちんと嵐さんを見つめて告げる。

 今夜がいいというのはもちろん本心だ。

 嵐さんの操縦する飛行機に乗り、トラブルに見舞われた中で彼の信念に触れ、やっぱり彼を愛していると思ったから。

 家族になりたいと思ったから。

「ありがとう」

 彼がふわりと微笑みを浮かべ、繋いだ私の手をギュッと強く握る。

 ここにはちゃんと夫婦の絆がある。今の私には、ハッキリとそう思えた。

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