天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす
夫婦の甘い夜
「食事のこと、すっかり忘れてたな」
「ですね……。うっかりしてました」
午後十時を過ぎて帰宅した私たちは、順番にシャワーを済ませた後ふたりで冷蔵庫や戸棚を漁っていた。
ふたりとも夕食がまだだったのに、買い物もせずに帰ってきてしまったのだ。こんな時に限ってカップ麺すらひとつもない。
「あっ……」
「なにか見つけた?」
「いえ、ご飯じゃないんですけど……土曜に渡そうと思っていたチョコなら私の部屋に」
こんなタイミングで出すつもりはなかったけれど、貴重な食糧だ。
「チョコレートもちゃんと用意してくれていたんだな」
「バレンタインですから」
「ありがとう。じゃ、一緒に食べよう」
うなずいて、自室にチョコレートを取りに行く。嵐さんは甘党だと言っていたし、頭を使う仕事なので、糖分は必須。
たくさん食べてほしくて、ボンボンショコラが三十粒も入った大きな缶を買ってしまった。