天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす
「紗弓」
「はい」
まだ結婚したばかりの頃、迷いに揺れることもあった彼の瞳が、今はただまっすぐに、私を見つめている。
言葉がなくても情熱が伝わってくるような強い眼差しで。
「自分から言い出したことだが、契約だけの関係だなんて思ったことは一度もない。日ごとにきみの存在が大きなものになって、俺の心を独占していった。長い間自分に課していた〝家族を作らない〟というルールがどうでもよくなるくらい、紗弓のことばかり考えていたよ」
「嵐さん……」
「それでも両親の墓参りの時、きみが手を合わせる横顔を見て少しためらいが生まれた。いつか紗弓をひとりにさせてしまう時が来たらどうしよう。両親を失った時の俺と同じ思いをさせるくらいなら、離れた方がいいのかもしれないと」
だからあの日、彼は帰宅する車の中で『最初から関わるべきじゃなかったのかもしれない』と呟いていたのだ。
私はノアさんの存在にばかり気を取られていたけれど、嵐さん自身の葛藤だったのだと思えば納得がいく。
だけど……。