天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす
「離れられるわけないじゃないですか」
私はそう言って、頬に触れている彼の手に自分の手を重ねた。
この温もりを今さら手放すなんて絶対にできない。
「嵐さんはもう、私の一部なんです」
はじまりは、彼をもっと知りたいという単純な欲求だった。
だけどそれが恋に変わってからは、視線や会話、口づけを交わすたび、恋情が募った。
ただ知りたいだけじゃなく、寄り添って理解したい。彼に愛されたい気持ちはもちろんあるけれど、私からも、大きな愛を贈りたい。
そう思える相手に出会えたのは奇跡だと思うから、絶対に離したくなんてない。
「俺も同じだ、紗弓」
嵐さんはそう呟くと、こらえきれなくなったように私を抱き寄せた。
「失うことを恐れるあまり悲観的になるのは、もうやめた。この先の未来もずっときみと歩いていくために、なにができるのかを考え続けて生きていたい。もちろん、夫婦という形で」
婚姻届を出して夫婦になったのは二カ月ほど前だが、今初めてプロポーズされたような感動で胸が詰まった。
嵐さんが心から私を必要としてくれているのだと、ちゃんと伝わってきたから。