天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす
「……もしもし」
迷ったけれど、メッセージの返信を後回しにしていた負い目もあり、電話に出てみる。
『紗弓。どうして露木なんかと一緒にいた?』
「えっ?」
『一緒にホテルから出てくるところを見た。まさか、付き合ってるのか?』
咎めるような口調に、心臓がきゅっと縮む。いきなり電話してきたかと思えば、なにを言うのだろう。
それに、〝見た〟ってどこから……?
思わず周囲を見回しながら、昇さんに問いかける。
「ちょっと待ってください。昇さん、今どちらに?」
『どこだっていいだろう。それより、露木となにをしていた』
全然よくない。今もどこかから彼が見張っているのではと思えて、かすかな恐怖を覚える。
「食事をしただけです」
『食事……。わかった、どうせ香椎さんに紹介されたとかそんなところだろう。あの人、俺とは無理やり別れさせたくせに、露木には喜んで娘を紹介するってか。俺と別れたのも、どうせ父親からの命令なんだろ』
露木さんとの関係を疑ったかと思えば、今度は別れた時の話を持ち出されてわけがわからなくなる。
昇さんと別れたのは私の意思で、父はなにも関わっていないのに。