天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす

 夏希は少し不服そうにしながらも、大人しく席に戻っていく。高砂にいる私と嵐さんは目を見合わせて、クスッと笑い合った。

「うまく渡せましたね」
「ああ。あとは、矢坂さんからいい返事がもらえることを祈るだけだな」

 夏希の受け取った玉手箱の中身は、広瀬さんの想いが詰まったエンゲージリング。

 彼は夏希にプロポーズをしたいものの、方法もタイミングもわからないと嵐さんに泣きついてきたのだ。

 そこで、さりげなく指輪を渡す方法を私も一緒になって三人で考え、こんな方法にしたというわけ。

「大丈夫ですよ。夏希、彼に内緒でエアバンドレシーバーまで買って、時々無線を傍受してるくらいですもん。『琥珀さんの声が聴きたくて休みの日まで空港来ちゃう~』っていうのが、最近の夏希の口癖です」

 そんな話をしながらふたりで広瀬さんを見つめていると、こちらに気づいた彼がぐっと親指を立てる。

 私たちも応えるように親指を立て、彼のプロポーズが無事に叶うことを祈った。

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