天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす
エピローグ
『パイロットか……。海外留学するのがいいんじゃないか? 英語も学べて一石二鳥だ』
『いいわね。世界を知るのは大事よ。本当にいろんな国や文化があって、日本人とは考え方もまるで違うんだから』
俺の父は商社のバイヤー、母は動物の写真を専門にするカメラマンだった。
仕事で海外に行くことの多いふたりは、俺のことも小さな頃から色々な国に連れて行ってくれた。
記憶にあるのは楽しい思い出ばかりだ。どんな土地に行っても、ふたりが笑っていたから。
世界は広くて色とりどりで、俺は多くの人にその景色を見せてあげるために、パイロットとして空を飛び回る。
そんな夢を追いかけ、希望に満ち溢れていた。
『留学生活はどうだ? 今度、母さんと様子を見に行く』
『そろそろホームシックになる頃でしょう。私たちも嵐に会いたいわ』
そして、あの夏――。ビデオ通話の中で肩を寄せ合う両親に、『別に来なくてもいい』と言って苦笑した。
それが最後の会話になるとも知らず、両親の過保護ぶりを少し疎ましいとすら思っていたのだ。