天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす

 もしも時間が戻せるなら『俺も会いたい』と叫びたい。

 いや、それより『来てはダメだ』と必死で訴えなくては。

 悩んで悩んで、うなされて、汗びっしょりで飛び起きる。

 事故の後から長年見ていた同じ夢だった。だけど、紗弓と出会ってからは、次第にその夢を見る頻度が減っていった。

 父と母を忘れたわけじゃない。当時なにもできなかった自分を受け入れ、ただ許せるようになったのだと思う。

 紗弓の優しさが、いつでも俺を包み込んでくれるお陰だ。


 ――彼女と結婚してもうすぐ一年。その日は、また少し違う夢を見た。

『嵐、家族を守れる強い男になれよ』

『紗弓さんの体、大事にしてあげてね』

 久しぶりに夢に現れた両親に、今さらすぎるお節介を言われた。

 改めて忠告されなくても、俺は紗弓を大事にしているし、命をかけても全力で守るつもりだ。

 ふたりがプレゼントしてくれた『嵐』の名に恥じないよう、どんな困難だって乗り越えてみせるから――。


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