天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす
夢なんて、脳の働きで自分の潜在意識が見せているだけのもの。
先ほどの両親の発言も、色々な記憶が混ざって偶然に生まれた映像だったかもしれない。
しかし、それでも――天国にいる両親からのメッセージだと、俺は信じる。
「ご両親はやっぱり、ずっと嵐さんを見守ってくれているんですね」
紗弓が涙ぐんでそう言った。夢の話でも馬鹿にせず、どこまでも俺に寄り添ってくれる彼女の姿に、愛情が深まる。
目を閉じると、『嵐、いい人を見つけたね』と微笑む両親の姿がまぶたの裏に像を結ぶ。
今度こそ自分勝手な妄想だとわかっていても、目尻に温かい涙が浮かんだ。
初めて紗弓と出会ったあの日胸にほころんだ花は、恋という名だったに違いない。
色も香りも、隠された蜜の味さえ、今の俺は余すことなく知っている。
その花が実を結び落とした小さな種を、これからふたりで大切に育てよう。
巡る季節の中でどんな花を咲かせてくれるのか、楽しみにしながら――。
FIN