天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす

 まっすぐ家に帰ると、母がリビングでテレビを見ながら絹さやの筋を取っていた。

「あらっ。ずいぶん早いじゃない。お食事の後デートしてくるかと思ったのに」
「してこないよ。露木さんはいい人だったけど、お互い今は仕事を大事にしたいってところで価値観が一致したから、会うのはこれっきり」

 意外そうな顔をされたのでそう言って、キッチンで手を洗う。それから母を手伝おうと隣に腰を下ろし、ざるに入った絹さやを手に取った。

「お父さんは?」
「仕事の呼び出し。そのままフライトだからしばらく帰らないって」
「そっか……。じゃ、露木さんの件の報告は帰ってきてからだね」

 本当は昇さんのことも相談したかったが、仕事で忙しい父にわざわざ連絡してまで伝えるべきことではない。

 それに、母のいる我が家に帰って来ただけでも少し心が落ち着いていた。

「お父さん、絹さや食べられなくて残念だね。今日はなにに入れるつもり?」
「じゃがいもと一緒にお味噌汁に入れるのよ」

 絹さやは父の好物である。とくに汁物に入っているのが好きで、ひと口啜っただけで、父の苦み走ったような顔がホッと緩む。

 その横でしたり顔をする母とセット見ると、なおさら心が和む我が家の定番風景だ。

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