天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす
「また作ってあげればいいわ。いつでもお父さんの好きなものを用意できるように、専業主婦やってるようなもんなんだから」
なんて献身的な考えだろうか。今どきの感覚では珍しい。
「美しい夫婦愛だこと」
「そんな高尚なものじゃないわよ。私にはパイロットの仕事なんてほんの少ししかわからないけど、過酷だってのは、お父さんの眉間に刻まれた深~い皺でわかる。あの人、若い頃からああなの。でも、好きなものを食べる時だけはその皺が薄くなるからね」
「……そんな怖い顔の人とよく結婚したね」
「お母さんもそう思う」
母と目を見合わせ、ふたりで「あははっ」と笑う。
今頃父はくしゃみをしているかもしれないが、愛されている証拠だ。
でも、最も身近にこんな素敵な夫婦がいるのに、娘の私は恋愛下手。自分から誰かを好きになった経験が、実は一度もない。
昇さんと付き合い始めたきっかけも、彼からのアプローチ。
昇さんが言うには、空港ラウンジでたまたま私が彼を接客した時に、ビビッと運命的なものを感じたらしい。