天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす
「ご利用ありがとうございました。お気をつけて行ってらっしゃいませ」
「こちらこそ、いつもありがとう」
飛行機の時間が迫りラウンジを出て行く、日本人のお客様に頭を下げる。
ここをよく利用してくれる男性で芸能人のように容姿が整っているので、スタッフの間では密かに有名人だ。
「あぁ……どうして結婚しちゃったんだろう、城後さん」
ラウンジから遠ざかっていく男性の背中を見つめてため息交じりに呟いたのは、同期の矢坂夏希。
スッキリ耳にかけたショートボブと吊り気味の猫目がクールな印象の美人だ。
夏希は結婚願望が強いのだが、理想が高すぎるために彼女のお眼鏡にかなう男性がなかなか現れない。
しかし、今ラウンジから帰っていった城後さんは、背が高くイケメン。このラウンジの常連ということは、社会的地位も高い。
総合的に見てもかなり夏希の好みだったらしいが、勇気を出して声をかけてみようかと悩んでいるうちに、その左手薬指に結婚指輪が輝くようになってしまった。
「いつだったか、奥様とお子さんを連れてるの見たよ。まだ一歳くらいのかわいい男の子」
仕事中なので声を潜め、夏希に囁きかける。