天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす
城後さんは外見が素敵なだけでなく、先ほどのようにいつも「ありがとう」と声をかけてくれる優しい方。家族をエスコートする姿もとてもスマートだったのを覚えている。
ラウンジにはキッズスペースもあり、ビジネス目的の利用客とは分離されているので、子連れでも心置きなく寛ぐことができるのだ。
「はぁ……いい人にはすでに相手がいるんだよね。そういえば紗弓はどうだったの? 昨日、お父さんから紹介されたパイロットと会ったんでしょ?」
「会ったけど、どうにもならないよ」
露木さんと過ごしたぎこちないアフタヌーンティーの時間を思い返し、苦笑する。
想像していたほど悪い人には思えなかったけれど、彼は家族を作る気がないと断言していたし、もう二度と会うことはないだろう。
「紗弓、パイロットとは一度失敗してるしね」
「そうそう。精神をすり減らす過酷な仕事している人と付き合うのはこっちも大変だし、もういいかな」
昇さんを支えきれなかった経験から、私ではパイロットのパートナーとして力不足だと感じている。
母のように器の大きな人間でもないし、たとえ露木さんとお付き合いしたとしても、また失敗してしまうに違いない。