天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす
「あーあ、私たちの王子様はどこにいるのやら……」
「さぁね。ほら、お客さん来たよ」
レセプションカウンターにお客様がやってきたため、雑談を終わりにする。外国人男性だったので英語で挨拶し、パスポートと航空券を見せてもらう。
それに加えてブルーバードエアラインのステイタスカードか、スマホのデジタルカードの提示を求めて利用条件を満たしていることが確認できたら、ようやくラウンジ内へ案内する。
「This way please.(こちらへどうぞ)」
問題なく手続きが済むと、夏希が案内役になってくれた。
次のお客様も来店したため、顔を上げて「いらっしゃいませ」と笑顔を作る。けれど次の瞬間、背筋にサッと冷たいものが走った。
「紗弓。久しぶり」
「昇……さん?」
カウンターの前で微笑んでいるのは、黒のモッズコートにトレーナー、ジーンズというラフないでたちの元恋人、青桐昇さんだった。
細身の体型、少しミステリアスな奥二重の目、乗務の時は後ろに流す前髪をナチュラルに下ろしている休日の髪型。
彼の姿は付き合っていた時と変わりないのに、ここから逃げ出したいような衝動に駆られる。