天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす
「ハッタリなんかじゃありません。露木さんと結婚するんです、私」
「嘘をつけ。昨日は食事しただけと言っていただろ」
カウンターに身を乗り出し、昇さんが私に詰め寄る。
しかし、露木さんが即座に彼の肩を掴み、カウンターから引きはがした。
「わからないのか? 彼女が本当のことを言わなかったのは、青桐のためだ」
「は? 俺のため……?」
「そうだ。きみがまたつまらない嫉妬で、自分の身を滅ぼさないように」
怒りか羞恥か、それとも両方か。昇さんの顔が、かぁっと赤く染まる。
かつて激しい嫉妬を覚えた相手に面と向かって煽られたのだ。頭に血がのぼっても仕方がない。露木さんが殴られやしないかと思わず心配になる。
「思い上がるのもいい加減にしろよ……。誰でも入れる海外の安いフライトスクールしか通えなかった、三流パイロットが」
三流パイロット――昇さんとの交際中も、何度も聞いたセリフだった。
倍率の高い国内エアラインの自社養成パイロットコースに新卒で入った昇さんからすると、海外留学でライセンスを得た露木さんのような経歴のパイロットは邪道らしいのだ。