天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす
しばらくしてお客さんの波が引いた隙に、夏希に事情を説明した。
「うわっ。そのソウル行きチケット、行く気もないのにわざわざ取ったのかな、こわ~」
昇さんの異常な行動に、夏希が派手に身震いする。
確かにあの時の昇さんは、元々ソウルに行く用があり、そのついでにラウンジに寄った……という感じではなかった。
あの後、彼はどうしたのだろう。出国審査を済ませた後で搭乗取りやめとなると、各所に大変な手間と迷惑をかける。
特別な事情があれば仕方がないけれど、昇さんのような自分勝手な理由であらゆる空港スタッフに無駄な仕事が増えると思うと、それだけで胃が痛い。
「本当に怖いよね……。今日は帰ってくれたからよかったけど、また来たらどうしよう」
「その時はすぐ男性スタッフを呼んだ方がいいよ。身の危険を感じたら、緊急通報ボタン押しちゃってもいいと思うし」
「うん、今度からそうする。今日はなにもできなくて、情けない自分が嫌になっちゃった」
今回のような状況は初めてだったから、助けを求めるのが意外と難しいというのを知った。偶然露木さんが来てくれなければどうなっていたかわからない。
そういえば、彼はラウンジになんの用があったんだろう。