天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす

 私を家まで送る? 露木さんが? そんなこと一方的に頼まれても困るんだけど……。

 色々と文句を言いたいが、父はフライトの合間に連絡を寄こしたようだから、返信を見る暇はないだろう。

 言われた通りの場所へ行って、直接露木さんと話すしかないか……。

 幸い、メッセージにあった江戸舞台はこの古い街並みの中央に位置しているから、すぐ近くだ。

 私はまたしても道重堂の和菓子をあきらめ、待ち合わせ場所へ向かう。舞台の四隅に立つ鮮やかな赤い柱が目印のそこが視界に入ると、足を速めた。

 到着して辺りをキョロキョロ見回していると、大勢の人が行き交う中でもひときわ目立つ長身の露木さんを見つけた。

 黒のセーターとパンツにベージュのトレンチコート、足元はシンプルな革靴。スタイルがいいだけでなく歩き方や姿勢が綺麗なので、どんな服を着ていてもつい目を奪われる。

「ごめん、待たせたかな」

 私の姿を見つけて駆け寄ってきた彼が、申し訳なさそうに苦笑する。

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