天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす

「……露木さんって、もっと意地悪な人かと思っていました」
「急になにを言い出すんだ?」

 頭に浮かんだことをそのまま話すと、露木さんが怪訝そうに眉根を寄せる。

「操縦の腕はよくても、性格はあまりよくないと昇さんから聞かされていたので誤解していたんです。本当は、優しい方だったんですね」

 こうして言葉を交わすうちに、ようやくわかった。私が想像していた露木さんは、昇さんのフィルターを通して嫌な奴に変換されていただけだったのだ。

 改めて感謝を伝えるように笑みを向ける。しかし、露木さんは軽く私から視線を外し、複雑な顔をする。

「どうかな」
「えっ?」
「案外、青桐の言った通りの嫌な奴かもしれないよ」

 自嘲するような言葉とともに、ジッと見つめられる。

 どういう意味だろう。こうして優しくしてくれるのにも裏があるということ?

 意味ありげな視線に、なぜかドキドキと鼓動が騒ぐ。けれど、昇さんと対峙した時のような恐怖とは違う。

 本当の露木さんを知りたいような知りたくないような……これはたぶん、微かに甘い、彼への興味。

 私、いつの間にか露木さんのことが気になっているみたいだ。

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