天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす

 昨日話をした時、〝家族を作らない〟というのは彼の中で絶対揺らがないポリシーなのだろうと思っていたけれど、違っていたのかな。

 それに、単に気が変わったからって、知り合ったばかりの私にいきなり結婚を申し込もうとする?

 出世に利用したいなら昨日の時点でもっと接近できたはずだし……。

 露木さんの言い分がどれも曖昧で、真意がどこにあるのかわからない。

 なのに『結婚なんてお断りです』とすぐには言えない自分がいる。

 恋愛はもういいと思っていたのに。パイロットの相手は無理だとあきらめていたのに。

 私……露木さんの内面に、もっと触れてみたいと思っている。

「少し、考える時間をいただけますか?」

 露木さんが顔を上げる。どこまでも真剣な色をした瞳が、私を映していた。

 計算高い契約結婚を提案する人の目ではない。露木さんにもきっと、なにか事情があるのだ。

 今はまだ、その〝なにか〟には見当もつかないけれど。

「もちろんだ。しかし、青桐のこともある。決断は早い方がいい」
「わかっています。露木さんの次のお休みはいつですか? その時にお返事できたらと思うのですが」

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