天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす
交際0日で動き出す恋
約束の金曜日。昇さんの件もあるため、露木さんが家まで車で迎えに来てくれることになった。
身支度を済ませリビングでソワソワしていると、手に持っていたスマホが短く震える。
【今着いた】
それだけの連絡で、心臓がジャンプする。
今日までに契約結婚の返事を考えておくのが宿題だったけれど、実は考えるまでもなかった。ここ数日、私の心の中にあった想いはただひとつ。
ニューヨークステイ中の彼に〝会いたい〟という感情だった。
だから、もちろん用意した答えは〝イエス〟露木さんの本音はわからないいままだけれど、彼との結婚生活に飛び込んでみようと決めた。
「それじゃ、行ってきます」
「気を付けてね。露木さんによろしく言ってちょうだい」
「はーい」
対面キッチンから声をかけてきた母に、返事をする。ダイニングで母の淹れたお茶を飲んでいた父が、じろりと私を睨んだ。
「朝帰りは許さんぞ」
「わかってるってもう。自分の娘と部下を信用してよね」
露木さんを紹介したのは自分のくせに、いざ娘と恋仲になるかもしれないと思ったら心配らしい。
過保護な父に呆れつつ、リビングを出た。