天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす
廊下を進む足は自然と小走りになり、ハーフアップにした髪が揺れた。ふわふわと舞うスズランの香りが、今日は胸を弾ませる。
前回はパンツスタイルで彼と会ったけれど、今日はコートの中身をボートネックのニットワンピースに変えた。
女性らしい服で彼と会いたい。そんな乙女心が湧いたからだ。
マンションのエントランスを出ると、車寄せに黒のセダンが停まっていた。
私の姿に気づいた露木さんが運転席から下りてくる。挨拶しようとしただけで、頬がほんのり熱を持つ。
「こ、こんばんは」
「こんばんは。助手席にどうぞ」
「失礼します……」
ドアを開けてくれた彼にぺこりと頭を下げ、シートに腰を滑らせる。
車内にはしっとりした洋楽が流れていて、ブルーバードエアラインに入る前の露木さんが長らくカナダの航空会社で働いていたのを思い出す。
パイロットなら皆それなりに英語はできるけれど、露木さんはまるでネイティブスピーカーのように話すそうで、『アイツの発音は鼻につく』と昇さんがよく文句を言っていた。
あれもきっと、ただの嫉妬だったんだろうな。