天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす
「あの、つまり……そういうことです」
照れくささに思わずうつむいて、ぼそぼそと呟く。
「ありがとう。紗弓の意思を早めに確認できてよかった」
紗弓……。露木さんはサラッと口にしているのに、いちいち意識してしまう。
私も、彼を下の名前で呼ばなければいけないのだろうか。
いつから? とりあえず今はまだ露木さんでいいよね?
「そういえば、あれから青桐から接触はないか?」
こちらの葛藤などお構いなしの露木さんが、不意に深刻なトーンで尋ねてくる。
「今のところ大丈夫です。一応父にも知らせたのと、防犯ブザーは持つようにしましたが、まだ使わずに済んでいます」
「そうか。なにかあったらすぐ言えよ。きみを守るために結婚するんだから」
「は、はい」
どうして知り合ったばかりの私に対して、そんなに真剣に〝守る〟だなんて言えるんだろう。
たとえ契約結婚という形でも、生活をともにするうちに彼の本音がわかるようになればいいけれど……。
凛とした表情で前方を見つめる彼の横顔を見つめても、今はまだ何も読み取れなかった。