天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす
露木さんが連れて行ってくれたのは、豊洲のホテルに入っているイタリアンレストランだった。
大きな窓から夜景を望める個室はムードたっぷりで、大人のデートにぴったりという感じだ。誰か、他の人と来たことがあるのかもしれない。
この見た目で、若くして機長になったエリートだもの。遊び人とまではいかなくても、ある程度はモテてきたはずだよね……。
彼の女性経験が前とは違う理由で気になり、胸がちりっとした。
「あの、今さらですが……」
「ん?」
乾杯の前に、このモヤモヤをどうにかしたい。
前菜、そして車の運転がある露木さんに合わせて頼んだノンアルコールワインがテーブルに並んだ頃、勇気を出して彼に尋ねてみる。
「露木さん、私と結婚なんかして大丈夫なんですか? 家族を作る気がなかったという話は聞きましたが、お付き合いしている女性がいないとは言っていなかったので……」
露木さんが、意表を突かれたように目を瞬かせる。それからグラスに添えていた手をテーブルの下に戻し、姿勢を正した。