天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす
「付き合っている人がいたら、そもそも紗弓と会ってないし、結婚を申し込んだりしないよ。今の俺にはきみしか見えてない」
文字通り、澄んだ瞳の中に私の姿を映してそう言った彼に、胸が高鳴る。
契約結婚なのに、口説かれているみたい……。
気恥ずかしさに耐えきれず、パッと目を逸らす。
「そ、それならいいんですけど」
「ほかに心配なことは?」
「ありません……たぶん」
「ま、この先もなにかあったらその都度相談してほしい。応じられるように努力するから」
頼もしい笑みで言い聞かされると、不安がゆっくり薄れていく。
たとえ父への点数稼ぎのために私を娶ろうとしているのだとしても、こうして向き合っている時の彼の言葉に嘘はない気がする。
根拠はないもののそんな風に思い、私はようやくグラスを手に持った。
食事をしながら、今後について話をした。
まずは引っ越しと、婚姻届の提出。私の親が望むだろうから式はいずれ挙げるとしても、一緒に暮らし始めてからじっくり準備を進めることになった。